ブログ

2021.10.01  猫の代表的な心疾患

猫の病気

肥大型心筋症 ( HCM ; Hypertropied Cardiomyopathy )

猫の心疾患として、臨床的に最も多く遭遇します。
左心室心筋が内側に向かって厚くなることが特徴です。
心臓自体の大きさの変化は少なく、臨床徴候も乏しいため、通常の健康診断では発見が困難です。
心筋肥大の場所により、『通常の肥大型心筋症』と『閉塞性肥大型心筋症( HOCM )』に分類されます。

また、肥大型心筋症の中には、厚くなった心筋が徐々に疲弊し、心臓拡大や収縮力低下を起こすこともあります。拡張型心筋症に類似した病態を辿るため、『肥大型心筋症の拡張相』と呼ばれています。

原因

一部の品種では遺伝であることが発見されています。ただし、日常的に遭遇するのはミックス種であることが多く、
疾病発生の原因について遺伝的な可能性が推測されていますが、多くは明らかになっていません。

好発猫種、発生年齢、雌雄差など

メインクーン(常染色体優性遺伝)
アメリカン・ショートヘア、ラグドール(遺伝性:家族内発生)
ペルシャ、ブリティッシュ・ショートヘア、スコティッシュ・フォールドなど

HCMの約8割はオス猫に認められ、平均発症年齢は5~7歳です。
しかし、実際の発症年齢は3ヶ月齢~17歳と幅が広く、メインクーンでは
幼若齢での発生報告が多いようです。

臨床徴候

初期は無徴候です。病状が進行すると、頻脈、食欲減退、活力低下、呼吸困難などを認めることもあります。
病態の進行に伴い、不整脈などが発生すると失神や突然死を起こすこともあります。

【 動脈血栓塞栓症 】
HCMの16~18%に発生すると報告されています。 血栓が詰まる場所により、前肢や後肢の麻痺・痛み、内臓の梗塞などが起こります。 脳梗塞を伴う場合、失神や突然死を起こすこともあります。

治療

【 通常のHCM 】
心筋の拡張力を高め、心拍出量を増やし、心拍数を正常レベルまで低下させるため、
カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬などを用います。
【 閉塞性HCM ( HOCM ) 】
カルシウムチャネル遮断薬は禁忌とされ、ベータ遮断薬を主に使用します。
【 拡張相HCM 】
弱まった収縮力を増強させるため、上記の2剤を用いずに強心薬を使用します。

それぞれの病態により利尿薬、血管拡張薬などを用いることもあります。

超音波検査による病型の特定が非常に重要です。

HCM による胸水

HCM による肺水腫