2022.10.14 犬の膿皮症について
膿皮症(のうひしょう)は、黄色ブドウ球菌を代表とする皮膚の常在菌が、バリア機能が低下した皮膚にさまざまなトラブルを起こす犬の皮膚病です。
表在性(浅在性)と深在性があり、後者は症状が激しく治療が長期化する傾向にあります。
表在性膿皮症は、犬によくみられる皮膚病です。
原因
膿皮症の原因は皮膚のバリア機能の低下です。
犬の皮膚にはたくさんの細菌や真菌がいますが、皮膚のバリア機能が正常であれば感染することはありません。
しかし、以下のような原因で皮膚のバリア機能が低下すると、細菌や真菌がさまざまなトラブルを起こします。
・アレルギー性皮膚炎などのアレルギー疾患
・基礎疾患や老齢による免疫力の低下
・子犬(皮膚のバリア機能が未熟)
・ノミやダニなど外部寄生虫の寄生
・内分泌疾患(甲状腺機能低下症やクッシング症候群)
・皮膚の乾燥
また、動物の皮膚は暖かく湿っているため細菌の増殖に適した環境ですが、細菌が増殖しすぎても膿皮症のリスクが高まります。
・長期間シャンプーをしていない
・毛がいつも湿っている
・高温多湿が続く環境
症状
程度により下記の症状が見られます。
・かゆみ
・発疹
・膿疱(ニキビのような膿)
・表皮小環(発疹周囲の皮膚のめくれ)
・発疹周囲の脱毛
・色素沈着 など
犬が患部を引っ掻いたり舐めたりすると、症状が悪化したり広がったりします。
症状がよくみられる部位は、お腹や脇、股、背中とさまざまです。
診断
患部に直接スライドグラスを当てたり、セロハンテープで表皮の細胞をとり、顕微鏡で観察して皮膚表面の細菌を確認します。
また、原因菌の特定と、効果のある抗菌剤の選定のために細菌培養検査をすることもあります。
症状が他の皮膚病と似ており、また他の皮膚病を併発していることもあります。
原因に合った治療が必要ですので、痒みや発疹が見られたら、まずは獣医師の診察を受けましょう。
治療
原因細菌に対する抗菌剤治療やシャンプー療法を行います。
炎症の程度によっては対症療法を行うこともあります。
また、基礎疾患や併発している皮膚病があれば、それに対する治療も行います。
状況によっては、患部を舐めたり掻いたりしないよう、エリザベスカラーの着用や、患部を保護するお洋服を提案いたします。
膿皮症は再発の多い病気です。
症状が治まったからと投薬を中断してしまうと症状がぶり返したり悪化することがあります。
また、投薬中断を繰り返すと原因菌が薬剤耐性菌に変異してしまうこともあります。
投薬の中断については、必ず獣医師の判断を仰ぎましょう。
予防
皮膚バリア機能が正常に働くよう、以下のことに注意しましょう。
・ブラッシングやシャンプーで皮膚を清潔に保つ
・指の間の毛などは短くカットする
・良質なドッグフードを選び、人間の食べ物は与えないようにする
・予防接種やノミダニ予防をしっかり行う など
当院でもシャンプー療法やトリミングを実施しておりますので、ぜひご相談ください。
※当院でトリミングを受ける場合は
・当院の患者様であること
・フィラリア症予防薬、混合ワクチンもしくは抗体価検査、ノミマダニ予防を当院にて行っていること
が受け入れ条件になります。